世界と日本の大学
「THE世界大学ランキング」というイギリスの高等教育専門誌が毎年発表しているランキングがあります。
最新の2018年版によると、81カ国1,102校のうち、東大は46位(昨年39位)、京大は74位(昨年91位)です。
日本からのランクイン89校を設置者別に見ると、国立53校、公立8校、私立28校となっています。
ただし、上位200校に入った日本の大学は東大と京大のみです。
アジアでは、シンガポール、中国、台湾の大学が日本の大学よりも上に位置しています。
気になるのが、日本の最高峰である東大のランキングがずるずると下がっていること(アジアの中で8位)。
この「THE世界大学ランキング」は、教育力、研究力、国際性など5つの分野について、13の指標で各大学のスコアを算出しています。
学部卒業生数や教員数と博士号取得者数の比率、研究費収入を指標として取り入れ、論文引用数の評価比重を高くするなど、「研究」を重視しています。
ちなみに、早稲田大も慶応大も、601位~800位という下位に沈んでいます。
一方で、2017年から同じイギリスの高等教育専門誌が発表している「THE世界大学ランキング・日本版」というものも存在します。
「THE世界大学ランキング」が研究力を重視したランキングであるのに対し、2017年に初めて発表された「THE世界大学ランキング・日本版」は教育力を測る設計としているようです。
「日本版」によると、東大と京大が1位、以下9位まですべて国立大が占め、10位に慶応大、11位に早稲田大、といったランキングになっています。
この「世界版」の方は、世界的にも権威があり、主要国の有名大学がランキングをめぐってしのぎを削っています。
日本政府も大学改革の一環として、2023年までに世界ランキング100位以内に日本の大学を10校ランクインさせるという目標を掲げていますが、その目標実現は非常に困難であるのが実情です。
このランキングは研究力や国際性などに重点を置いた13指標で決められており、教育に重点を置く日本の大学の評価には不向きと言われています。
また、外国人の教員比率、論文の被引用数など国際化の面でも、日本の大学は日本人教員が中心で日本語の研究論文が多いという点が大きなマイナスになっています。
ただ、同じアジアでもシンガポール国立大学や北京大学などは東大よりも上位にランクされており、日本の大学がグローバル化に乗り遅れているというのは事実なようです。
さらには、国立大学の主要財源である国からの運営費交付金は年々削減が続いているほか、私立大学への私学助成も実質的に減らされています。
日本の大学の世界ランキングの低迷は、日本の大学政策にも大きな原因があるのかもしれません。
さらには、「QS専攻分野別世界大学ランキング」という48の専攻分野別に世界の大学をランキングしたものも存在します。
これによると、日本の大学は健闘しているものの低下傾向で、シンガポールの大学には負けており、中国の大学にも追いつかれそうな状況に変わりないようです。
さて、ランキングの話で前置きが滅茶苦茶長くなりました。
アジアの中で東大ですらトップでない事実、論文の引用件数が日本は中国に抜かれていてその差がどんどん開いているという事実、海外に留学する日本の学生も激減しているという事実には危機感を持ちます。
このまま行くと、10年後20年後は、中国に日本はノーベル賞で抜かれる、いや、日本人は近い将来ノーベル賞を取れなくなるだろうという警鐘もあります。
受賞者の一人は、「今の日本人のノーベル賞受賞は、1980年代から90年代の仕事を、いま評価してもらっているのであって、日本では2000年以降研究環境が急激に悪化しているので、ノーベル賞がいままでのように出るかというと、怪しいといわざるをえない」と言っておられます。
ノーベル賞云々で判断することは無理があるかもしれませんが、日本が世界から取り残されつつあるということに、一人でも多く気づかないと。
そんな我が国の大学環境の中、我が子をどこの大学に入れたい(入って欲しい)か。
テレビで東大生がタレント並みに扱われていますが、それはテレビ業界の事情に乗っかっているだけであって、「そんなことしてる場合じゃないよ」と言いたいところです。
我が子を、「ほれ、〇〇大学入れ」と尻叩いても、大学卒業したらフツーのサラリーマンでしかない、というのは避けたいですよね。
我が子が社会に出て活躍する頃には、AI(人工知能)がどんどん進化しているでしょうし、フツーのサラリーマンでは職を奪われてしまいます。
「有名大学に入れればいい」という親の考えは甘過ぎます。
これからは、そんな考えでは絶対に「危ない」。
そう思うのです。
では、また。